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ブーン系作品まとめブログ

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( ^ω^)幽霊船にて

409:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/06/10(金) 15:08:17.20 ID:QMbqfyvK0
枯れ葉のような船で、幽霊船に出会った。

枯れ葉のような船というのは、矮小な僕のことであることはみなさんが読み取ってくれると思う。
幽霊船について説明をさせて頂く。この幽霊船は結構な大きさであったが、今やもう、人は見えない。
散乱している様々なものの数からかつて大勢の人が存在したのだなと容易に読み取れた。

( ^ω^)「この船は、海賊船か?」

いや、違う。
海賊船ならば略奪行為や侵略行為の際に反撃を受けたり、迎撃されるため船体に多くの傷が残るはずだ。

それが、ほとんどない。
残っているのは浅い傷であったり、船の存在を疎ましく思うような落書きだけであった。

僕は船を寄せていき、幽霊船に乗り込むことにした。
黒いフードを被りなおし、火を灯したカンテラを片手に持つ。そして、息を吸う。
深呼吸を一つしても、どうにもうまく酸素が身体に供給されない。
それもそうか。薄暗い霧が、この船を取り囲んでいる。そう、ここは出口のない海域なのだ。
この辺りの流れは、ある一定の地点からある一定の地点までを運ぶベルトコンベアのようになっている。

外界から隔絶された、永遠に閉塞している海の端……。
濃霧に阻まれて、外の景色を見ることは叶わない……。

410:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/06/10(金) 15:09:58.48 ID:QMbqfyvK0
腐り落ちた部分がたくさんあったが、まだ僕の体重を支えられる程度の抗力が残っている部分もあった。

木が軋む音が、亡者の声に聞こえる。
怨嗟と嫉妬と羨望と、擁護と卑下と緊張の声……。どれもこれも、不毛な存在だ。

朽ちた木の板がずらりと敷き詰められた甲板や、船員たちが寝起きする船室に銃弾の跡や刀剣の傷が刻まれてはいる。
これは、内部での騒動があったものだと予想できた。
船が小さなころには原因すら認識しなかったであろう不和が起こり、争いが生じたのだ。

( ^ω^)「欲望か」

僕は続いて船を見回る。ぎい、ぎい、ぎい。足下から、濃縮された欲望が聞こえてくる。

***

あらかた見終わっただろうか。

この幽霊船の歴史は結構長いのだろうが、残る記録から判断すると大した事件は起きていないようだった。
人が増えるにつれて諍いが増え、諍いが勢いを呼び船の旺盛に繋がる。それの繰り返し。
しかしやがて古参が抜け、世代が入れ替わり、不満の声が上がり、当初の空気は雲散霧散してしまい、全てが消えてなくなる。

よくあることだ。

中空に浮かぶ霧が、骸骨の形を成した気がした。

411:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/06/10(金) 15:10:50.22 ID:QMbqfyvK0
***

('A`)「おや」

どうやら、無人ではなかったらしい。
黒色のフードを被り片手にカンテラを持って彷徨い歩いていた彼に、僕は問いかけた。

( ^ω^)「この船の船員さんですか?」

('A`)「一応そうなってますが、どうでしょう」

( ^ω^)「何か事情がおありのようですね。宜しければ、お聞かせ願えませんか?」

('A`)「いや、何。大したことじゃあありませんよ。
    そうですね。私は現在もこの船の住人でして、現在のこの船の住人もまだ、たくさんいます。
    ただ、まあ、この船の存在を良く知らないままこの船の船員を名乗るものもいますがね」

( ^ω^)「失礼ながら言わせて頂きますと、それはもう、別のものではないのでしょうか?」

('A`)「これは手厳しい。ですが、その通りですよ。
    私の知るかつての船はもうどこにも存在しません。この船の完成から共にいる私でさえ、分からないのです。
    懐古しているという時点で、事実とは異なっているものなんですよ。記憶が感情に脚色を加えますからね」

( ^ω^)「現状がお嫌いで?」

('A`)「この有様を見て、私が喜べると思いますか?」

( ^ω^)「失礼。失言でした」

412:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/06/10(金) 15:12:01.89 ID:QMbqfyvK0
('A`)「しかし、こうなることは予期できていたんですよ。それも、確信といった度合いで」

( ^ω^)「では、なぜ放置を?」

('A`)「私一人が言ったところで、とは言いません。幾人も同じ意見の人はいました。
    けれど、意見しても通らないことは判りきっていましたし、
    周りがどれだけ変わっても私たちは私たちで好き勝手できれば良いと思っていたのです」

( ^ω^)「それで、どうなりました?」

('A`)「好き勝手やっても、まったく楽しめなくなりました。
    ぬかに釘、暖簾に腕押しではなく、もっと別の方向でね」

( ^ω^)「それは、懐古ですか?」

('A`)「追想です。……いや、同じですね」

そう言って、男はしわがれた声で笑った。

***

( ^ω^)「どうして、ここに来たんですか?」

('A`)「お墓参りみたいな感じですよ」

414:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/06/10(金) 15:13:22.04 ID:QMbqfyvK0
( ^ω^)「ここは、墓場ですか」

('A`)「そうですね……もう、二度と復活しないと解っていても、何度も覗きに来てしまいます。
    誰かが蘇ってくれるかもしれない。誰かが戻ってきてくれるかもしれない。そうやって祈り続けています」

( ^ω^)「墓場の次は天国に行きますから……もし、先が楽園なのだったら、どうでしょうね?」

('A`)「本当に、貴方は手厳しい」

( ^ω^)「現在、ここの元船員はどこに?」

('A`)「今は少し離れた場所――と、言っても同じ海域、同じ霧の中ですけど――に船が新しくできたみたいですよ。
    一部の船員はそっちへと移り住みました」

( ^ω^)「残りの方々は?」

('A`)「さあ?入水自殺でもしたんじゃないでしょうか?
    気になられているようでしたら、渡し船を出しましょうか?」

( ^ω^)「……。いいえ、遠慮しておきます」

('A`)「そうですか」

( ^ω^)「聞く限り、貴方はここの元船員で、新しく出来た船を嫌っているのに、どうしてまだこの海域にいるのですか?」

('A`)「私も含めて……大多数の船員は、死に遅れたんですよ。生きているのは惰性です。
    即死できなかったんですよ。そう、すぐに死ぬことができなかった。
    ああしなきゃ、こうしなきゃ、何が正しいか、何が普通なのか……まぼろしのイメージでずっとずっと、船員同士で争ってきました。
    銃弾を受けて苦しんで、刀剣を刺して喜んで。
    降りるはずの地点が遥か後ろに見えていても、ずっとずっと、まわり続けていたんですよ……」

416:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/06/10(金) 15:15:07.99 ID:QMbqfyvK0
( ^ω^)「……」

('A`)「今も、エンドロールが流れ続けています。ずっと、ずっと、エンドロールが」

( ^ω^)「……」

('A`)「願わくば、貴方は死に遅れませんよう。良い死を迎えてくださいね」

( ^ω^)「どうもありがとう」

その会話を最後に、男は霧に溶け込んでしまった。
僕はすぐに踵を返して来た道を戻る。偶然迷い込んだ場所であったが、中々有意義な時間を過ごせたと言えよう。

自分の死くらい、他者の惰性に引っ張られること無く、自分で決めたいものだ。
遅すぎて死ねなくなった、なんて、笑えやしない。



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  1. 2011/06/11(土) 20:22:52|
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  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

作品が人目につかなきゃやってる意味なんてないもんな
  1. 2011/06/14(火) 07:18:50 |
  2. URL |
  3. 名のある名無し #-
  4. [ 編集 ]

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