249:( ∀ )雨は止まないようです :2010/09/04(土) 09:07:58.92 ID:/KxKjMvM0
( ∀ )「……」
灰色の空から降り注ぐ雨が、
傘もささない、僕の体を冷たく濡らす。
目の前の、ガードレールのふもとには、
死者をいたわる白い花。
僕の心の中にも、同じように雨が降り続いていた。
雨は――止まない――
250:( ∀ )雨は止まないようです :2010/09/04(土) 09:10:08.50 ID:/KxKjMvM0
( ∀ )雨は止まないようです
251:( ∀ )雨は止まないようです :2010/09/04(土) 09:12:03.33 ID:/KxKjMvM0
――
僕たちの出会いは極々単純なものだった。
ノパ⊿゚)「素直ヒートだあああ! よろしくなあああ!」
(; ・∀・)「あ、ああ、よろしく」(声でけえ……)
高校に入学したとき、隣同士の席になったのが始まり。
どこにでもある、ごく普通の出会いの一つに過ぎなかったね。
この時は、僕は君のことを歓迎しがたい存在だと思っていたっけ。
もっと早く、君と仲良くなっておきたかった、
なんて、今さらに思うんだけどね。
252:( ∀ )雨は止まないようです :2010/09/04(土) 09:14:07.10 ID:/KxKjMvM0
――
( ・∀・)「あれ? 素直さん、今日の一限古典だよ?
なんで世界史の教科書だしてんの?」
ノハ;゚⊿゚)「え? マジでか……?
うおっ! 今日水曜日かよおおおお!」
君はそそっかしいから、よく忘れ物をしていたね。
そして、そのことに気付いた時にはいつもいつもこう言うんだ。
ノハ:-⊿-)人「頼む! 今日一日だけでいい!
教科書見せてくれないか!」
(; ・∀・)「いや、別に構わないけど……
こないだも今日一日だけって言ってたような……」
ノハ*゚⊿゚)「すまない! 恩に着るぞおおおおお!」
(; -∀-)「……まあ、いいけどね」
机をくっつけて、一冊の教科書を二人で覗き見るその様を、
周りの友達に、バカップルみたいとからかわれたこともあったね。
君は真っ赤になって否定して、僕はどうしていいかわからず困ってた。
思い返してみると、君のその反応は、
照れ隠しだったのかなあ、なんて思えなくもない。
253:( ∀ )雨は止まないようです :2010/09/04(土) 09:16:31.83 ID:/KxKjMvM0
――
ノハ*゚⊿゚)「ケータイ買ったぞおおおおお!!」
( ・∀・)「おー、ようやく買ってもらえたんだね」
健全な高校生にとって、いつの間にやら必須となった携帯電話。
君の親御さんは”お前にはまだ早い”なんて言って、
頑なに君が持つことを反対していたんだよね。
それで、ようやく持つことを許されて、
買って一番に僕に見せびらかして、君は言ったね。
ノハ*゚⊿゚)「あどれす!!」
僕に向かって得意気に携帯を突きつけて、使いなれない言葉を言う。
そんな君の様子が、僕はおかしくてたまらなくて、ついつい吹き出してしまったんだ。
254:( ∀ )雨は止まないようです :2010/09/04(土) 09:19:14.28 ID:/KxKjMvM0
ノハ*゚ぺ)「なんだよー、せっかく私がお前のあどれすを、
栄えあるケータイメモリーの第一号にしてやろうと思ったのに」
(; ・∀・)「ご、ごめんごめん、ちょっとおかしくて……」
拗ねるような声を出しながらも、君は嬉しそうに僕に真新しい携帯を渡してくれたよね。
それで、赤外線機能で僕の携帯とアドレスを交換してから、
君は携帯のアドレス帳を見て、心底嬉しそうな表情を浮かべて言うんだ。
ノハ*^⊿^)「ありがとう!」
今でも目を瞑れば、あの時の君の笑顔がハッキリと脳裏に浮かぶ。
だって、
あの表情を見た時、
僕は君が好きだと気付いたんだから。
255:( ∀ )雨は止まないようです :2010/09/04(土) 09:22:01.48 ID:/KxKjMvM0
――
ノパ⊿゚)「――!」
君との出会いから数カ月が過ぎて、
クラスの席替えの話がちらほら出てきた頃、
僕は君を放課後の屋上に呼び出して、自分の気持ちを打ち明けたんだ。
(; ・∀・)「迷惑……かな?」
僕の告白を聞いた後、しばらくの間、君は俯いて黙っていたよね。
何の反応もないことが怖くて、僕は手に汗握りながら、
恐る恐ると聞いたんだ。
君は、そんなことない、って、必死に首を横に振ってから、
顔を上げて言ってくれたよね。
ノハ*;⊿;)「……嬉しい」
そして、涙を流しながら、君は僕に抱きついてきたんだ。
その時の僕にはキスをするなんて度胸はなかったから、
僕の胸に顔を埋める君の頭を、優しくなでることしかできなかったよ。
256:( ∀ )雨は止まないようです :2010/09/04(土) 09:24:13.81 ID:/KxKjMvM0
それから僕たちは、他愛もない話で笑いあったり、
二人きりでどこかに出かけたり、
恥ずかしがりながらも、手を繋いで歩いたりと、
どこにでもいるような恋人同士として、楽しい日々を過ごしてた。
あの時の僕は、君が隣にいることが当たり前のことになっていて、
僕が歳をとっても、同じように歳をとった君が隣にいると思っていた。
でもそれは――
大きな間違いだったんだ。
257:( ∀ )雨は止まないようです :2010/09/04(土) 09:26:23.04 ID:/KxKjMvM0
(; ∀ )「はぁ、はぁ、はぁ……」
君が事故に遭った。
信じたくない報せが僕の元へと届き、
僕は、脇目もふらずに君が運ばれたという病院へと急いだ。
(; ・∀・)「す、すみません!
今さっき、素直ヒートという子がここに運び込まれたって聞いて――」
息を切らせて、病院の受付に駆け込み、
ぐちゃぐちゃになってる頭の中から何とか言葉を絞り出して、
君の居場所を受付の人に尋ねた。
申し訳なさそうな表情で、看護師さんが僕を案内した場所は、
君の体が安置された、霊安室だったんだ。
258:( ∀ )雨は止まないようです :2010/09/04(土) 10:00:59.96 ID:/KxKjMvM0
( ;∀;)「……」
先に中にいた君の親御さんに促され、
僕は嗚咽をこらえながら、君の顔にかけられた白い布を取った。
ノハ - -)
ベッドの上で物言わぬ体になった君の顔は、
事故に遭ったのが信じられないくらい綺麗だった。
( ;∀;)「ヒート……僕だよ……」
喉の奥から絞り出した声は、酷く情けない声だった。
だけど、君はもう、応えてくれはしない。
( ;∀;)「あ……あああああああああ……」
僕は君の冷たくなった体に、覆いかぶさるように崩折れた。
君がいなくなってしまったことが、僕には耐えられなかったんだ。
( ;∀;)「あああああああああ……!!」
痛いほどの静寂に包まれていた霊安室に、
僕の泣き声だけが響いた。
259:( ∀ )雨は止まないようです :2010/09/04(土) 10:05:49.36 ID:/KxKjMvM0
――
あれから一年が経った。
世間では、一年は短いと言われるかもしれない。
だけど、僕にとってその一年は、とてつもなく長いものに感じられた。
( ∀ )「……」
僕は一つ歳をとって、同い年だったはずの君の歳を追い越してしまった。
事故現場に献花をして、君のことを思う。
いつの間にか空が灰色に染まり、雨が降っていた。
だけど、僕はそこを動くことができなかった。
こんな僕の姿を君が見たらどう思うだろう。
きっと、「いつまでもくよくよするな、前を向け!」と、笑顔で背中を張るに違いない。
でも、僕はまだ歩き出せないんだ。
261:( ∀ )雨は止まないようです :2010/09/04(土) 10:08:17.37 ID:/KxKjMvM0
雲の切れ目から太陽が顔を出し、
雨に濡れた、僕の体を優しく照らす。
目の前の、ガードレールのふもとには、
日を受け輝く白い花。
それでも、僕の心の中には雨が降り続いている。
雨は――止まない――
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- 2010/09/04(土) 17:52:25|
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