ひとくちlw´‐ _‐ノvくりぃむ

ブーン系作品まとめブログ

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川д川人魚の木乃伊のようです('A`)4/4

307:◆z9m3qj2a1A :2010/07/21(水) 00:11:22.52 ID:Iqmr8huD0

 * * *


 わしは喰らった。


 さだこの首を、腕を、頬を、目を、骨を、内腑を。

 死んだやや子の肉片も、まとめて。

 綺麗に残さず、全て噛み締め、飲みこみ、胃に収めた。

 途中で何度も吐きもどしたが、それも全て啜って、喉に通した。

 一晩かけて、わしはさだことやや子を喰らい尽くすと、ぼぅっと床に倒れた。

 頭ん中が熱に浮かされたように、ふわふわとして、悲しさはどこかへ置き忘れて来たようになった。


('A`)


 これが人魚の肉を食う、ということなのか。

311:◆z9m3qj2a1A :2010/07/21(水) 00:16:46.25 ID:Iqmr8huD0

 * * *


 浜に押し戻された僕は、貞子の残した血だまりに座り込むと、膝を抱えた。


 押し付けた瞼から涙が止まらなかった。

 ただ貞子のいない孤独が辛くて。

 ただ貞子との未来の再会が嬉しくて。

 笑顔とも、泣き顔ともつかない表情を浮かべる僕は、明け始めた夜の中でただ泣き濡れていた。


( A )「貞子……会いたいよ、会いたい、人魚になったお前に」

('A`)「いや、会いに行くよ。必ず、また、会いに行く……から」

( A )「行くから……」


 頭の中で、じわっと鈍い痛みが広がった。

 あぁ、もしかして、あの時トンネルで投げ出された時、良くないところでも打ったのだろうか。

 なんて考えている内に、タールのように濃厚な眠気と、疲れに、僕は身を委ねていた。

314:◆z9m3qj2a1A :2010/07/21(水) 00:21:37.59 ID:Iqmr8huD0


 * * *

 次第にわしの意識は遠のいていく。

 何だ、死ぬのか。それじゃあ困る、さだこが会いに来れん。

 * * *

 僕は身体が冷たくなっていくのが分かった。

 虚ろな瞳を浮かべて座り込んでいる自分の姿を、まるでどこか遠くから眺めているかのような。

 * * *

 だが抗えんかった。わしは深い後悔と悔しさで胸がいっぱいになった。

 しかし、諦めもしなかった。死んだら死んだで、必ず生まれ変わり、人間になったさだこを探しだしてやろう。

 * * *

 独りは怖いよ。貞子に会いたい。

 君はどこにいるんだろう。この空と、海と、ふたつの境界線を、いまも漂っているのかな。




316:◆z9m3qj2a1A :2010/07/21(水) 00:25:46.98 ID:Iqmr8huD0

                   .   *

                    * * *

                       *





 ど   か   く   波   音   、   麗   歌   が   こ   る   …
   こ   遠   で   の   と   綺   な   声   聞   え   …




317:◆z9m3qj2a1A :2010/07/21(水) 00:29:25.70 ID:Iqmr8huD0


  ('A`)          ( A )


 真っ暗な闇の中を進んでいくと、誰かと出くわした。

 はっきりとは分からないが、中年くらいの男だろうか。背は低くて、痩せこけている。

 姿勢が悪くて猫背みたいだ。それに、なんだか、この男からは酷く、僕と似たような臭いを感じた。


( A )「お前さん、この先へ行くのか?」


 しゃがれた声で、男は自分の歩いてきた道を指差し、尋ねる。

 僕は黙ったまま首を縦に振った。

320:◆z9m3qj2a1A :2010/07/21(水) 00:32:17.34 ID:Iqmr8huD0


( A )「やめとけ」

( A )「この先にはな、とても悲しい出来事が待っとる。きっと後悔するぞ」

( A )「だから引き返せ。それか、もうどこにも行くな。ここでずっとさまよっていろ」


 男の口調はきつかったけど、どうしてだろう、僕はそれを彼の優しさのように感じた。


('A`)「嫌だ」


 でも僕はその申し出を断った。

 よくは覚えていないけど、僕にはこの先へ行かなくちゃいけない理由があるからだ。

 男は、僕のはっきりした答えを聞くとはぁと大きくため息をついた。

321:◆z9m3qj2a1A :2010/07/21(水) 00:36:18.18 ID:Iqmr8huD0


( A )「馬鹿め。きっと後悔するぞ。この道を進んだことをな」

( A )「この世にはの、どうやったって報われないような運命とか、そういうもんがあるんじゃ」

( A )「それを知った時に、お前みたいな子供が絶望に耐え切れるわけがあるめぇ」

('A`)「そんなの、行ってみなくちゃ分からないだろ」


 馬鹿にしたような素振りを見せてから、男は僕の傍らを通り過ぎようとした。

 そうか、なるほど。彼も僕と同じなのだと、悟る。

 僕が彼の来た道を進みたいように、彼も僕の来た道へ行きたいんだ。


('A`)「やめといた方が良いよ」


 意地悪だからではない。本心から、僕は彼を呼びとめた。

323:◆z9m3qj2a1A :2010/07/21(水) 00:40:33.47 ID:Iqmr8huD0


('A`)「僕が来た場所にも、悲しい出来事が待っている」

('A`)「きっとお前が体験した不幸よりも、ずっと悲しい出来事だ」

('A`)「だから、行かない方がいい。後悔するよ」

( A )「ふン、知ったことか」


 男は僕のように立ち止まったり、振り返りもしない。


( A )「この先にはな、大切な人が待ってるんじゃ。じゃから、会いに行く」

( A )「どうせおまえもそうなんじゃろう? だがの、きっと同じじゃ。見つかりゃあせん」

('A`)「あんただって見つからないかも」

( A )「そん時はまたここに来て、また別の道を探す」


 男の声は見た目以上にしわがれていたけど、どこか力強かった。
327:◆z9m3qj2a1A :2010/07/21(水) 00:46:24.79 ID:Iqmr8huD0


 彼はそのまま、道の先へと消えていった。


 きっと、彼には彼なりの理由があってここにいるんだ。

 やっぱり僕と同じなんだ。そう思うと、胸の奥が少しだけ熱くなった。

 自分と同じような人が、同じ道を歩いて何かを探している。

 それだけで、僕が探しているものが幻じゃなく、どこかに存在している確実なものなのだと。

 何故だか、そう希望を持てた。


 希望に後押しされた僕は、男の歩いてきた道を進んだ。

 時に速く、時にゆっくり、歩調を変えながら、でも確実に闇の中を進んでいく。

 探しに行く、会いに行く。だから、ねぇ、待ってておくれ。


 もう名前も覚えていない、美しいものよ。

 愛している。


329:◆z9m3qj2a1A :2010/07/21(水) 00:49:51.66 ID:Iqmr8huD0

 ――――――

 ――――

 ――


('A`)


 気が付くと、そこは暑い暑い熱気にむせ返りそうな、雑木林の中だった。

 目の前には石段がずぅっと、天まで届きそうなほどに伸びている。

 僕は短い手足を元気に振り回して、汗をかきかき石段を登った。

 どうして登ろうと思ったのかはよく分からない。

 ただ、体が自然と石段の先へ向かおうとしているから、それに任せているだけ。

 この先に、一体何があるのだろう?

331:◆z9m3qj2a1A :2010/07/21(水) 00:54:51.78 ID:Iqmr8huD0


 頂上にあったのは、小さな寺だった。


 僕が門の前で息を切らしていると、お坊さんが一人、僕を見つける。

 こんな暑い中だっていうのに、裾の長い袈裟をしゃらしゃら鳴らして。

 近寄ってきたお坊さんはにこにこと笑いながら、僕の手を取った。

 てっきり、勝手に敷地へ入ったのを怒ると思って身構えていたのだけれど、ちょっと違ったみたいだ。


/ ,' 3「わっぱ、どうじゃ? 人魚の木乃伊が見たくはないか?」


 人魚? みいら?

 僕にはよく分からなかった。ただ、お坊さんは返事もきかずに僕を引っ張る。

 お坊さんの力が強すぎて、僕はどうしようもないままお堂の前へと連れて行かれた。

336:◆z9m3qj2a1A :2010/07/21(水) 00:58:13.11 ID:Iqmr8huD0


 影に入れて嬉しかったのは、嬉しかった。

 僕が束の間の休息に涼んでいると、お坊さんがお堂の奥から小さな桐箱を持ってくる。

 なんだか、ずぅっとにたにたしていて不気味なお坊さんだなぁ。


/ ,' 3「わっぱ、驚けよ? これは先日偉い上人様にお譲り頂いたものなんじゃ」

/ ,' 3「また明日にでも村の衆に見せびらかしてやりたいところじゃが、お前だけ特別に一番目に見せたろう」


 でも開かれた桐箱の中には、お坊さんの笑顔よりもっと不気味なものが入っていた。

339:◆z9m3qj2a1A :2010/07/21(水) 01:05:13.41 ID:Iqmr8huD0


 そこにいたのは、小さな小さな生き物の、乾いた死体だった。


/ ,' 3「これは彼の、聖徳太子様のお話にも出たとされる人魚の木乃伊と言われておっての!」


 猿のような、魚のような、怖い顔を浮かべたおぞましいものだ。


/ ,' 3「何でも、罪を背負いこむために生まれ変わって、こうして死んだ後も世の不幸を憂うために木乃伊にされたそうな!」


 でも、僕はそのおぞましくも不思議な死骸に、どうしてだか、懐かしい気分になって。


/ ,' 3「ありがたいんじゃぞぉ? 拝めば病気怪我が治るどころか、家族安泰、豊作、豊漁はもちろんのこと――」


 自然に涙がぽろぽろ零れてきて、でも悲しくない、とても、晴れやかな気分になった。


/ 。゚ 3「ななな、なんじゃ、わっぱ? どうして泣いておる? 感動しすぎてべそかいておるのか?」



342:◆z9m3qj2a1A :2010/07/21(水) 01:10:29.40 ID:Iqmr8huD0





                           ('∀`)  川ー川







                                         「違うよ、思い出したんだ。僕は間違っていたんだ」

                              「美しいものは、本当に素晴らしいなものは作ったりなんかできない」

                                     「大切な人と、大事に大事に、育てていくものなんだって」

                                                            「そうだよね、さだこ」




344:◆z9m3qj2a1A :2010/07/21(水) 01:12:56.73 ID:Iqmr8huD0





川д川人魚の木乃伊のようです('A`)




                               お わ り













川д川人魚の木乃伊のようです('A`)
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1279522192/
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