ひとくちlw´‐ _‐ノvくりぃむ

ブーン系作品まとめブログ

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川д川人魚の木乃伊のようです('A`)3/4

213:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 21:08:04.48 ID:phmzFJQc0

 * * *


川;д川「はぁ、はぁ、はぁ、あ」

川;д川「いたい、ね、頭も、なんか、ボゥッとするよ」

( A )「うん、うん、そうだな。しっかりな」

( A )「眠っちゃダメだぞ。頑張れ、頑張れよ」


 貞子は碧色の瞳で見返してくる。

 二の腕の付け根ほどで切り揃えた両腕には、ひれをしっかりしっかり縫い付けた。

 ぱたぱた、ぱたぱたと床を叩く。

 彼女の顔は真っ青だった。脚に描いた鱗よりもずっと、青い。

 本当に、本当に魚の肌のような、真っ白く不健康な青。

215:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 21:16:07.03 ID:phmzFJQc0

 足に履かせた尾ひれ用のフィンも、外れないようにきちんと縫い付ける。

 最後の仕上げに、足首と膝をビニール紐で何重にも縛る。

 これで、もう自由には歩けない。


('A`)「でき、た……」


 作業開始から8時間と37分。

 僕は幼馴染の女の子を材料にして、人魚を作り上げた。


 “貞子”だった人魚は床に横たわったまま、瞼を広げ作り物の眼球を僕に見せつける。

 白い肌に真っ黒な長い髪。空の色のように毒々しく青い鱗。

 精巧なひれ。完璧、完璧だった。


(゚A゚)「俺は、お、あ、ぼ、僕は、人魚を、作ったん、だ」


 歓喜の叫びをひとつ、僕は木霊させる。

217:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 21:20:05.85 ID:phmzFJQc0


川д川「ドクオ、く、ん……」


 人魚は今にも消えそうな声で僕を呼ぶ。

 窓から差し込む光は、もうとっくの昔に途切れてしまって。

 暗い暗い地下室の中、血だまりの中でぼぅっと光る彼女はとても綺麗だった。


('A`)「終わった、出来たよ。完成した……」

(;A;)「あ、ありがとう、貞子。ありがとう。嬉しいよ」

川д川

川ー川


 冷たい掌が僕の頬を撫でる。


 「ドクオ君……、最後に、おね、がいが、あるの」

218:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 21:23:39.74 ID:phmzFJQc0













                                     「海へ、海へつれていって」

                                        「海に、かえりたいの」













221:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 21:28:54.89 ID:phmzFJQc0


 * * *


川;д川「うぅぅううぅうぅうううぅうぅ~!!」


 さだこは床を転げ回り、恐ろしい声で唸っておった。

 苦しそうに、苦しそうに。大きく膨らんだ腹を掻き毟って。

 桜色じゃった唇を噛んで、真っ赤な真っ赤な血を滴らせて痛がっておった。

 産湯を用意してやろうと薪を焚いとったわしは、もうそれどころじゃあなかった。


(゚A゚)「さだこぉ!」


 きっとややこは、今にも生まれてくる。

 わしとさだこの子が、今まさに生まれようとしておる。

 受け取らねば。父親のわしが、ややこを受け取らねば。

222:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 21:32:20.33 ID:phmzFJQc0

(;'A`)「さだこぉ! 頑張るんじゃあ!」

川;д川「ヒィー! ヒィィイー! 痛いぃい! いたいぃいい!」

(;'A`)「息むんじゃ、頑張れ! やや子もがんばっとる!」

川;д川「うぅぐうううう! ひぐぅうううあああ! い、い、ふぅぅいいぃい!」


 ごぼ、ごぼごぼ、と音を立てて、露わになったさだこのそそから何かが漏れ出した。

 緑色のそれは、へどろのようなそれは何度も何度も泡を立たせて、さだこの中から溢れ出しておった。

 わしは怖かった。怖かったが、貞子とやや子はもっと怖がっておるはずじゃ。

 だからわしは声を上げて、へどろに溺れそうになりながらも、さだこを励まして続けた。


川;皿川「ぎぃぃいいぃぃいぃぃいぃいい――っ!!」


 さだこが一際、大きく鳴くと一緒になって腹がぼごんと動いた。

 そして、まぁるい頭のようなもんがそその奥から込み上げてきた。

 やや子じゃ。やや子の頭じゃ。

226:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 21:37:58.83 ID:phmzFJQc0

(゚A゚)「頑張れ! 頑張れ! あとちょっとじゃ、あとちょっとじゃ!」

川;皿川「ぐぎぃいいいぃぃいいぃぃい!」

(;A;)「もう少し、ほら、頭じゃ! 頭が見えておる、頭が!」

川;Д川「あ゛あ゛あ゛あぁぁあぁぁあ――っ!!」

(;A;)「あたまが、見えて――」


 ――ごっどん。

 大きくて硬くて、重いもんが床を叩く音がしよった。


(゚A゚)「やや子の、あたま、あ……、れ?」


 わしは目を疑った。

 疑って、じゃが、本当のことだと気付いて、なお背筋が寒うなった。

 さだこがひり出したのは、わしがやや子の頭だと思っとったんは、卵じゃった。


 大きな大きな卵じゃった。

229:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 21:46:47.23 ID:phmzFJQc0

 わしの頭よりでっかくて、“にび色”で、鶏のなんかとは比べ物にならんほど、

 汚らしくて、おぞましくて、臭うてたまらん卵じゃった。

 腐った魚の臭いよりも、ずっとずっとひどかった。


:(゚A゚):「なん、なんなん、な、なん、じゃ、なん」

川;д川「はぁああ、はぁはぁ、はぁ、はぁあぁ、はぁ……っ」


 震えとるわしも、さだこも、卵から目が離せのうて。

 次第に卵は、ごろごろ転がるのをやめると、微かに震えだした。

 かち、かちかち、かち。小さな音が、本当に小さな音が、家の中に響いておる。

 そして、音が少しづつ大きくなるにつけ、硬そうな卵の表面にいくつもの亀裂が走った。


 中身が、卵の中身が外に出たがっておるんじゃと、わしは悟った。


230:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 21:53:40.95 ID:phmzFJQc0

 * * *


川ー川「ねえ、ドクオ、くん……」


(;'A`)「待ってろ、待ってろもうすぐだ。すぐだ、すぐ、近くの海岸線だから、すぐに!」

川ー川「うん、うん。あのね、そうだね」

川ー川「覚えてる? ねぇ、あのね、あのえんそくの、日のこと」


 すれ違う、真っ白な光を帯びたトラックが、僕たちを自転車ごと風圧で吹き飛ばそうとする。


(;'A`)「覚えてるよ、覚えてるよ! だから、待ってろ、すぐだから!」

川ー川「わたしね、あのときの、ミイラをみるドクオくんのよこかおが、いまも、わすれられないよ」

川ー川「すごく、めがきらきらしてて、すてきだなぁって」

川ー川「人魚がうらやましいなぁ、って」


 風の音が、対向車のクラクションが邪魔で、人魚の声が、聞こえない。

 聞こえないよ、貞子。

233:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 22:00:14.19 ID:phmzFJQc0


川ー川「わたしもいつか、あんな風に、ドクオくんに見られたいなぁって」

川ー川「思ってたの、ねがっていたの」

(;A;)「あと少しだ、トンネル抜けたら……ここ、トンネル、抜けたら!」


 たすきで縛って背負う人魚の身体が、段差に乗り上げた時、がくんと跳ねた。

 同時に、僕の目元へぴちゃりと、何かの液体がこびり付いた。

 確かめなくても分かる。人魚の、人魚の血だ。

 嗚呼、時間がないんだ。


川ー川「だからね、もうつらくて、お母さんやお父さんからにげられないって分かっちゃったとき」

川ー川「私、人魚になろうっておもったの。ドクオくんの大好きな、にんぎょに」

(;A;)「海! どうして、どうしてこんなに遠いんだ! どうしてこんな、あ、ああああ!」


 トンネルの中の時間が、永遠と近似してしまったかのように。

 僕のこぎ続ける自転車は、淡い光の中を緩やかに駆けていく。

235:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 22:03:54.82 ID:phmzFJQc0

 貞子は何も悪くなかった。

 貞子は真面目で優しくて、勉強が出来るいい子だった。

 身体は細くて丈夫じゃないけど、それにもめげずに頑張る奴だった。

 昔から知ってる。昔から、僕は彼女のことを何でも知っていた。


 でもいつからだろう。貞子の顔に青痣や、変な火傷の痕が増えるようになったのは。

 いつからだろう。貞子が教室でもひとりで過ごすことが多くなったのは。

 その時、僕は初めて知ったんだ。

 貞子のことも、彼女の家のことも何も知らなかったということを。


 だから、悪いのは僕だ。

237:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 22:10:06.97 ID:phmzFJQc0


 白線が、赤茶色のライトが、僕たちとすれ違っていく。

 遥か彼方に消えていく。


川ー川「ほんとうに怖いことは、叩かれたり無視されたりすることじゃあないの」

川ー川「わすれさられて、そこから永遠にいなくなってしまうことなの」

川-川「わたしは、ね、わたしは、あなたにだけはわすれてほしくなかったから」

川д川「わたしが生きたあかしを、おぼえていてほしかったから」

川;д川「想いつづけてほしかったから……」


 人魚と僕の逃避行は、もうすぐ終わりを告げるんだ。

 人魚は蒼い夜の海へと帰っていくんだ。幸せな世界へと還るんだ。

 もうこんな、こんな酷い世界には帰って来なくて、いいんだよ、貞子。

 ほら、向こうに出口が見えた。あと50メートル、40、30……。

239:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 22:14:59.62 ID:phmzFJQc0

 * * *

 「ぴぎ」

 「ぴぎゃぁぁあぁぁぁあぁぁあぎぃいああぁぁいぎゆううぃい」

 「ぶぎぃぃいいいいいいい」

 「ぷしっ」

 「ぶぅうううううぎゅうううううぅうう」


 卵がいくつもの亀裂を作って、最後にぱっくりと割れた時。

 中からまろび出たのは、ころころと可愛いややこじゃあなかった。


(゚A゚)


 頭から棘のような触手が、何本も生えて、うねっていて。

 足は無くて。代わりに蛸のようなぬるぬるとした柔らかい、何かがくっついている。

 頭のような部分にたくさん空いた穴から、奇妙な鳴き声をを上げる一つ目の生き物。

 もぞもぞと蠢いている、おぞましいものがそこには在った。

240:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 22:19:32.66 ID:phmzFJQc0


 「ぶぎぇぇぇええぎぃいいいぶうぅう」


 ややこだったはずのものは、苦しそうな声を上げてのたうちまわる。

 何が苦しいのかは、すぐ分かった。

 黄色い体液をびちびちと漏らしながら、それは崩れておる。

 赤黒い肉がぼぞぼぞと剥がれておる。

 死にそうなんじゃ。きっと、こいつは死にそうなんじゃ。

 さだこの腹ん中から、殻ん中から飛び出して来たばかりだというのに。

 もう、もう死にそうになっとるんじゃ。


川;д川「いやぁぁぁああぁぁ! 赤ちゃん、赤ちゃん、赤ちゃん!」

245:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 22:27:00.04 ID:phmzFJQc0

 さだこが這いずり寄って、ひれとひれを器用に使ってやや子を抱え込む。

 泣いているさだこの胸の中で、死にかけのやや子はぐちっと音を立てた。

 ひときわ濃い色の汁が一筋飛んで、わしの顔にひっかかる。

 臭い、臭くてたまらん、死骸の臭い。


(゚A゚)「お」

(;A;)「おぐぅおおぉおお、おぐ、ぇ、げぇ、げぼ」


 限界じゃった。

 空っぽの胃のどこに詰まっていたのか分からんほどに、わしはげろを吐いた。

 込み上げてくるもんは後悔とか、絶望とか、そんなもんが入り混じっておった。


川;д川「おねがい、死んじゃだめ、赤ちゃん、赤ちゃん」

川;д川「元気に泣いてちょうだい……? お願い、息をして、お乳を吸って……」


 もう、やや子の叫び声は聞こえなくなっておった。
248:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 22:34:16.86 ID:phmzFJQc0


 涙で滲んだ視界の端で、さだこがかっくりと肩を落としておる。

 ひれの隙間から、潰れたやや子の肉片か何かがこびり付いておるのが見えた。


:川;д川:「どぐ、おざ、ん、あ、が、ぢゃんが、あがちゃん、が」


 振り返ったさだこは、緑やら、黄色やら、汚らしい汁に塗れていて。

 卵を抱えておった腹は、今はもうびろびろと弛んで目も当てられんかった。


(;A;)「さ、だこ……やや子は、やや子は死んだんじゃ」

(;A;)「無理じゃったんじゃ。人間のわしが、お前を孕ましてもうたから、こんな」

(;A;)「やや子は、人間でも、人魚でもないもんに産まれて、死んでしもうたんじゃ……」

川;Д川「まだです! まだ、まだ生きてます、このこ、ほら動いてる、動いてますよ!」

251:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 22:40:25.41 ID:phmzFJQc0


 さだこは床に崩れ落ちておったやや子の頭を咥えて、わしの傍まで這いずり寄ってきよる。

 もちろん生きとるわけがない。

 一個しかない目玉も潰れたやや子の頭は、さだこが運んでおる傍から崩れておった。


(;A;)「もう、もう死んどるよ……」

川;Д川「生きてます、いきてます! 元気にいきをしています! 目はどくおさんにそっくりで!」

川;Д川「鼻は、私そっくり……あ、だめ、崩れちゃダメ、そんな、あ、あ゛ぁ、あ」

川;д川「う! うぐ、うぶ、げ、げぶ、げぶぉえ!」

(゚A゚)「さ、さだこ!?」


 やや子の肉片をひれで掻き集めようとしていた矢先、さだこが突然血を吐いた。

 真っ赤な吐血が床を染め上げた。さだこは、苦しそうに何度もせき込む。

255:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 22:52:11.02 ID:phmzFJQc0

 * * *


 もうすぐ出口だというところで、急にバランスが崩れる。

 急に背中の方が重たくなったかと思うと、目の前でバンがクラクションを鳴らす。


(゚A゚)「あっ――」


 たまらず僕は左に反れた。

 前輪がトンネルの壁に突っ込んで、反動に吹っ飛ばされた僕は宙に放り出された。

 一瞬の無重力のあと、落ちた背中に激痛。頭の中がシェイクされて、視界が真っ暗になる。


:( A ):「くぁ、あ……」


 痛かった。苦しかった。息が出来なかった。

 けど、そんなことよりもっと大変な事に気付く。思わず添えた腰に、巻いていたタスキがない。

 ちかちかする視界の中で、僕はハッとなり、人魚を――投げ出されたであろう人魚を探す。

256:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 22:57:23.32 ID:phmzFJQc0

(゚A゚)「さだ、こ」

(゚A゚)「さだこぉお、さ、だこぉ! どこだ?」

(;A;)「返事、してくれ、さだこ、さだ、こ、さ、だこ!」


 懸命に手足を動かして、身体を持ち上げようとする。

 目の前を車が、ひゅんひゅんと風を切って走り抜けていった。

 暗くて、人魚が見えない。どこかにいる、必ずどこかにいる。


川д川「ど、く……」

(゚A゚)「!!」


 ふっと耳を掠めた小さな声を頼りに、振り返ったそこには人魚がいた。

 センターラインの上に横たわったまま、ぐったりしている。そうだ、人魚は自分じゃ動けないんだ。

 早く、早く助けにいかないと。

261:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 23:05:12.01 ID:phmzFJQc0


川д川「お……く、ん」

(゚A゚)「動くな! 大丈夫、だから、いま、行くから!」


 車の途切れが見つからない。彼らには僕たちが見えないのか。

 近付けない、時間がない――そんな思いではち切れそうなぼくは、まだかまだかとタイミングを計る。

 ああ、人魚、やめて、そんな、足も動かないのに、こっちに来ようとしないで。


川д川「どく……お、く」

(゚A゚)「動いちゃダメだ、動いちゃ、ダメなんだ――ッ!!」


 そんな状態のまま、四つん這いでうずくまっている僕の横顔がライトに照らし出された。

 振り返ったトンネルの奥から、大型の輸送トラックがごうごう、ごうごうと迫っている。

 声をあげることすらできない。ほんの少しだけど、その右のタイヤは、

 右のタイヤは、



265:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 23:06:32.41 ID:phmzFJQc0


 センターラインの上を、踏んでいて――








                                                       ぐしゃんっ



272:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 23:11:26.93 ID:phmzFJQc0

 * * *


:川д川:「あ、あ゛、そんな゛、おなか、のど、痛い゛……」

(゚A゚)「さだこぉぉお!」


 さだこはめいっぱいの血を吐くと、苦しそうに横たわる。

 顔色はこれまで以上に酷かった。白を通り越して、真っ青になっておった。

 駆け寄り、抱え上げたさだこは息も絶え絶えで、今にもこと切れそうで。


:川д川:「どぐ、おさん、喉痛い゛、ごれじゃ、わだし、うた、うだえません」

(;A;)「喋らんでいい! しゃべらんでいい! 血が、血が止まらん!」

:川д川:「どうじて、でじょう? わだし、ただ、どくお゛さんのごとが、すきで」

:川д川:「どぐおさんのあかぢゃんが、ほしくて、ほじ、くて……ごぼっ」

(;A;)「あ、あぁ、なんで、なんでなんじゃあ」

276:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 23:16:46.57 ID:phmzFJQc0

:川д川:「うみのかみざまが、おこったんで、しょうが?」

:川д川:「にんげん、じゃあ、ないのに゛、どくおさんのこどもをぼじがって」

:川д川:「こきょう゛のうみをずてて、かぞぐもすてで、ごぶぇ、あ、ごふっ」

:川д川:「ばちが、あたっだん、です、かねぇ?」

(;A;)

(;A;)「どうして、何でお前が、こんな目に遭うんじゃ?」

(;A;)「お前は、何も悪くない。悪いのはわしじゃ、わしが、恋しゅうて、恋しゅうて」

(;A;)「お前を、くぅの、くぅの代わりに、しようと……」


 だから悪いのはわしなんじゃ。

 のう神様、仏様や。さだこは何にも悪ぅない。

 なのに、どうしてなんじゃ。

279:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 23:24:33.17 ID:phmzFJQc0


:川д川:「かわりでも、いいで、す。よかったん、でず」

:川д川:「嬉じかったです、どぐおさんど、やさしいどくおざんと、一緒に゛」

:川ー川:「いっじょにいられて、わだし、しあ゛わぜでした……」

(;A;)「さだこ、いやじゃ……逝ってしまうな。やや子と一緒に逝ってしまうんか?」

(;A;)「もう嫌じゃ、どうしてなんじゃ? どうして、みんなわしをおいて逝ってしまうんじゃ!」

(;A;)「ただ、ただ生きてさえ、いてくれれば……」


 抱きしめていたさだこの身体が、急にしぼんでゆく。

 ぱきぱきと音を立てて、さだこの肌が乾いて、頬がこけてゆく。


:川д川:「お慕いじて、いましだ。いつまでも、いづまでも゛、あいしておりまず」

:川д川:「また、また、うまれかわっても゛、おあいしで、こい゛をじたい、です」

:川ー川:「こんどは、このごのためにも、げんぎなややごを、うみまず……」

283:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 23:30:37.90 ID:phmzFJQc0

 * * *


川д川

('A`)「なぁ、聞こえるか? 海だ、波の音だぞ?」

('∀`)「海に還れるんだ。良かったな、貞子。本当に、良かった」

川д川


 トラックに、尾ひれごと下半身を踏み潰された人魚は、もう何も喋ってくれなかった。

 息はしていた。でも微かだった。

 僕は人魚を長い時間をかけてトンネルから引っ張り出して、出口のほんのすぐそこにあった浜辺にまで運んだ。

 真っ赤な血の帯が連なって、それはもう、時間切れを意味していた。

 せっかく苦労して塗ってあげた鱗模様も、もう、潰れて、台無しだった。

285:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 23:36:35.40 ID:phmzFJQc0


 夜の海は暗くて、深くて、しんみりとした空気に満ちていて。

 波の音と僕たちの息遣いだけが、静かに静かに響いていた。


川д川「…………」

('A`)「!」

川д川「ど……お、く、ん」


 ずっと沈黙の中に沈んでいた人魚が、微かに微かに声を上げた。

 蚊の鳴くような小さな声だ。僕は堪らなくなって、人魚を抱き寄せて、返事をする。


(;A;)「貞子、貞子、どうした? 何か言いたいのか?」

:川д川:「どく……お、くん、ありが、とう……ね」

(;A;)「いいんだよ! 僕こそ、僕こそありがとう! お前は、本当に最高の人魚になってくれたよ」

(;A;)「もう何もいらない。もう何も作れないし、作らない。人魚は一つだ、一つだけなんだ!」

( A )「僕の人魚はお前、ただひとつだけだよ……貞子ぉ」

288:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 23:44:58.35 ID:phmzFJQc0


川д川

川ー川


 人魚が――いや、貞子が僕の腕の中で、微かに笑った気がした。


:川д川:「わたしね、どくおくんのこと、すきよ」

(;A;)

(;A;)「うん、うん、僕も好きだよ、好きだ」

川д川

:川д川:「わたしが、わたしが……もし

:川д川:「うまれかわることを、かみさまに、ゆるしてもらえ、たら」

:川д川:「わたし、なりたいよ、こんどこそ、ほんものに……なり、たい」

(;A;)「うん、うん」

















294:◆z9m3qj2a1A :2010/07/20(火) 23:53:17.10 ID:phmzFJQc0
                    う

                    ま

                    れ

                    か

                    わ

                    っ

                    た

                    ら

  う ま れ か わ っ た ら 人 魚 に な り た い

                    間

                    に

                    な

                    り

                    た

                    い

















301:◆z9m3qj2a1A :2010/07/21(水) 00:00:51.64 ID:Iqmr8huD0

 * * *

:川д川:「かならず、にんげんのややごを、げんきなごを、うみます」

:川ー川:「だがら、まっでいで、ぐれま、せんが……?」

(;A;)「……?」

:川д川:「わだじの、おにくを、人魚の、にぐを、おたべください」

:川д川:「人魚の、にくは、ふろうちょうじゅの゛、もとど、いいつたわって、いまず」

:川;д川:「どぐおさん、も、しんでじまったら、どこで、だれにうまれるがわからないがら」

(;A;)

:川д川:「ここに゛、あなだのもどに、かえってきまず」

:川д川:「かならず、あなたのもどに、にんげんになっで、かえっできまず、がら……」

(;A;)

(;A;)「あぁ、あぁ」

303:◆z9m3qj2a1A :2010/07/21(水) 00:06:34.28 ID:Iqmr8huD0

 * * *


 僕は冷たくなった貞子の身体を、そっと、そっと波間に乗せた。

 ゆら、ゆらりと浮かぶ彼女はとても綺麗な顔をしていて。

 まるで今にも軽やかに沖へと泳ぎ出してしまいそうで。

 僕は嬉しくて、同時に、悲しくもなった。


(;A;)「貞子!」


 堪らなくなって、貞子を追いかけた。

 腰まで海水に浸かっても、波を押し退けて、海面を揺らぐ貞子にしがみ付く。

 そして、すっかり体温の無くなってしまった貞子の唇に。


 さよならのキスと、

 またねのキス、をした。


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